チュートリアル講演

会場:メイン会場(藤原洋記念ホール)

第11回JAMITチュートリアル講演会(教育委員会企画)
「GitHub とその周辺:大学と企業でのプロジェクト管理」

コニカミノルタ科学技術振興財団 JAMITハンズオンセミナー連携企画

第1日 10月13日(水) 13:10-16:00

座長:
木戸 尚治(大阪大学),滝沢 穂高(筑波大学)

講演 1:
コロナ禍におけるAI研究:特にarXiv,GitHub,オープンデータとオープンサイエンス活用総論

中田 典生(東京慈恵会医科大学)

[抄録]
人工知能(AI)の研究では,進歩が急速であったために発表される論文数が短期間に急激に増加してきた.そこで,査読付き論文に投稿する前に,査読前論文として発表することが普及した.これにより内容の学術的価値の検討は後回しにされるが,その論文の新規性が担保され,世界的なAI応用開発への利用が加速した.こうしてarXiv(アーカイブ).org(https://arxiv.org/)と呼ばれるプレプリントサーバーに,AI関連の論文を含む膨大な査読前論文がアップロードされ,世界中からネットを通じて無料で読むことが可能となった.一方,ソフトウェア開発のプラットフォームであり,ソースコードをホスティングするGitHub(https://github.co.jp/)には,同時に大量のAI関連のソースコードが公開されるようになった.査読前論文は,内容が学術的信頼性に欠けているという欠点があるが,ソースコードをGitHubに公開することにより,他の研究開発者が実際にコンピュータでのコードの稼働を確認できるという点が,この欠点を補うことが可能となった.さらにコロナ禍においてCovid-19 関連の研究成果をいち早く公開可能にする仕組みとしてプレプリントの果たす役割は大きく,医学分野のプレプリントサービスとしてmedRxiv(https://www.medrxiv.org/),bioRxiv(https://www.biorxiv.org/) が2019年から新しい知見の迅速な共有やフィードバックを受けるためのプラットフォームとして無料で提供された.今回のチュートリアルではこれらオープンデータとオープンサイエンスの活用について総括する.

講演 2:
バイオインフォマティクス分野のアプリケーション開発におけるGitHubの活用とその実際

小野 浩雅(情報・システム研究機構)

[抄録]
GitHubは,生命科学分野においてもバイオインフォマティクスを中心に利用が進んでいる.ここ数年で開発されている生命科学分野の解析ツールやデータベースの多くは,GitHub上でソースコードが公開・共有されており,世界中の誰もが開発に参加することができる.ソースコード以外にも文書や画像など,どんな種類のドキュメントでも,すべての段階の草案やアップデート履歴を保存し管理することができるプロジェクト管理のメリットは大きい.本講演では,演者の所属するセンターにおけるいくつかのアプリケーション開発を例に,GitHubの活用法の実際を紹介する.

講演 3:
医療機器開発企業における共同研究のための環境と実際の運用について(事例を交えて)

大村 和元(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)

[抄録]
最近になって世の中での当初の熱は冷めてきているようにも思うが,第三次AIブームからAIを用いた医用画像解析に関する研究は相変わらず多く,弊社においてもAIを用いた製品の開発やAIに関係するお客様との共同研究がここ数年増加している.AIの研究,特に医用画像ベースでの研究を始めようとした場合,環境の構築とデータの収集が最初のハードルとなることが多いと思うが, 環境構築方法の情報や海外まで目を広げればフリーで扱えるデータ情報の共有も行われており,さらにいくつかの企業においては開発環境としてのプラットフォームの構築,提供も進められている.医療機器開発企業が進める共同研究は多岐にわたるが,本講演では医用画像を用いたAIに関連する共同研究にフォーカスをして,その進め方や環境について事例を挙げつつ概説する.またグローバルな環境で各地で進められている研究と比較して日本で研究を進めるにあたっての難しさについても言及したい.