特別講演

会場:メイン会場(藤原洋記念ホール)

特別講演 1:
量子コンピュータをどう使いこなすか

第2日 10月14日(木) 10:50-11:40

伊藤公平先生

伊藤 公平 先生
(慶應義塾長)

座長:
工藤 博幸(筑波大学)

[抄録]
最近,「量子コンピュータ」という言葉が様々なメディアで取り上げられています.その動作原理は単純ではありませんが,それゆえに自由度が高く,特定の課題を解く,計算することに関してはスパコンの性能を凌駕することが期待されています.そこで一つでも多くの「特定の課題」を見出し,自然科学や産業界の発展に役立てようとする研究活動が活性化しています.本講演では,量子コンピュータ研究開発の最先端を紹介し,そのうえで,どのような課題に対して量子コンピュータが適しているかを議論します.画像処理,最適化,機械学習といった具体的な問題に対する現状を紹介し,将来の医療応用の可能性を考えていただきます.

[略歴]
慶應義塾大学理工学部卒,UC Berkeley工学部より修士号・Ph.D.取得後,慶應義塾大学理工学部助手(1995),専任講師,助教授を経て2007年より教授,2017-2019年理工学部長・理工学研究科委員長,2021年より慶應義塾長.学外では,日本学術会議会員(2020-),科学技術振興機構(JST)さきがけ「量子機能領域」総括(2016-),文科省 光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「量子情報処理(量子シミュレータ・量子コンピュータ)」分野プログラムディレクタ (2018-)などを務め,過去には日本物理学会・理事(2002-2004),日本応用物理学会理事(2016-2018)などを歴任.専門分野は,量子コンピューティングと量子物理学.日本IBM科学賞(2006),日本学術振興会賞(2009). 慶應義塾におけるIBM Quantum Computer Network Hubファウンダー.

特別講演 2:
革新的バイオイメージング技術

第3日 10月15日(金) 11:00-11:50

宮脇敦史先生

宮脇 敦史 先生
(国立研究開発法人理化学研究所 脳神経化学研究センター チームリーダー、光量子工学研究センター チームリーダー)

座長:
陣崎 雅弘(慶応義塾大学)

[抄録]
細胞内の生体分子の挙動を追跡しながら,大洋を泳ぐクジラの群を想起する.クジラの回遊を人工衛星で追うアルゴスシステムのことだ.背鰭に電波発信器を装着したクジラを海に戻す時,なんとか自分の種の群に戻ってくれることをスタッフは願う.今でこそ小さい発信器だが昔はこれが大きかった.厄介なものをぶら下げた奴と仲間から警戒される危険があった.クジラの回遊が潮流や餌となる小魚の群とどう関わるのか,種の異なるクジラの群の間にどのような相互作用があるのか.捕鯨の時代を超えて人間は海の同胞の真の姿を理解しようと試みてきた.
バイオイメージング技術において発信器の代りに活躍するのが蛍光や発光のプローブである.我々は細胞の心を掴むためのスパイ分子を開発している.材料となるのは光を吸収・放出するタンパク質である.そうしたスパイ分子を活用して様々な生命現象を可視化する技術の実際を紹介する.また,光と相互作用するタンパク質が「光と生命との相互作用」を巡る研究から生まれ,それらの生物学的存在意義に関する我々の理解を超えてますます有用になっていく過程を考察したい.日本に棲息のクラゲ,サンゴ,ウナギ,ホタルに由来するタンパク質が近未来の医学に貢献する可能性を論じてみたい.
超ミクロ決死隊を結成し,微小管をジェットコースターのように滑走し,核移行signalの旗を掲げてchromatinのjungleに潜り込む,,,そんな遊び心をもちたいと思う.大切なのは科学の力を総動員することと想像力を逞しくすること.そしてwhale watchingを楽しむような心のゆとりがserendipitousな発見を引き寄せるのだと信じている.

[略歴]

昭和62年3月
應義塾大学医学部卒業
平成3年3月
大阪大学医学部大学院医学研究科博士課程修了
同3年3月
博士(医学)
同3年4月
日本学術振興会特別研究員
同5年4月
東京大学医科学研究所 助手(平成10年12月まで)
同7年10月
米国University of California San Diego, Dept. of Pharmacology
同11年1月
理化学研究所 脳科学総合研究センター(現 脳神経科学研究センター)チームリーダー(現在に至る)
同16年1月
理化学研究所 脳科学総合研究センター 先端技術開発グループ グループディレクター(平成21年3月まで)
同18年10月
科学技術振興機構ERATO研究総括(平成24年3月まで)
同20年4月
理化学研究所 脳科学総合研究センター 副センター長(平成30年3月まで)
同25年3月
理化学研究所 光量子光学研究領域(現 光量子光学研究センター)チームリーダー(現在に至る)
専攻学科目
バイオイメージング